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紀伊半島に棲息しています。


by housi216
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熊野黒潮130kmウルトラマラソン

二十年近く前の文章なので、=ふり返ってみるのもいいさ=
のカテに入れようと思ったんですが、これからジョギング復活予定のため、
マラソンのカテに~


『ウルトラマラソンに挑戦』

新宮の速玉大社から田辺の闘鶏神社まで、夜も眠らずに走り続ける奴らがいることを知った時、「なんてうとい(馬鹿な)人間もおったもんやな・・・」と思いました。
 車で新宮まで行ってもしんどいのに、夜中に新宮を出て、田辺まで走るんやとう・・・・。狂人としか思えません。
 あのくそ暑い時期に。
 自分にはまったく関係のない世界の出来事やと・・・・・。それが何故か心の片隅に引っかかり、いつしか「凄いなぁ・・・」という憧れの気持へと変わり、「ひょっとして自分にもやれるんちゃうやろか・・・・・・」と思った時、僕のランニングが始まりました。
「三十四歳に青春と呼べるものが残っているのなら、そのすべてを賭けて必ず完走してみせる・・・。」と凄い意気込みで走り始めたのですが、知識も体力もなく、最初は、一キロも走るとゼェゼェ、ヒィーヒィー。ほんまにこんな調子で百三十キロも走れるんやろうか・・・・・・・。
不安と焦りの中、時間だけが過ぎていきました。
 
 速玉大社で全員安全祈願のお払いを受け、九月二十三日午前零時、ラジオの時報で第二回熊野黒潮130kmウルトラマラソンに参加の四十三人が一斉にスタート。
 走り始めた時はまだ夢の中にいるような気分でした。
“ええんやろか・・・”真っ暗な国道四十二号線をボンヤリとした不安の中走っていると、しばらくしてサポートのT君が待っていてくれました。
 参加資格として、“ひとり一台のサポート車を用意出来る者”の規定があり、頼んだところ快く引き受けていただいたのですが、夜中に何回も止まって待って貰うのも気の毒な話なので、串本で待ってくれてたらいいからと言ってあったのです。橋杭岩のところで、フルマラソンと同じ距離。
 なんとかそこまでなら走れそうやと思ったからです。しかし、「車のメーターで五キロやけど、ちょっとペース速いんちゃうか。」「待っとくの五キロ毎でええか。」といって貰った時、これからしばらく夜中のひとり旅を覚悟していたのが、なんとも心強い気持になれました。
 橋杭岩のところで四時間弱。サブ・フォー達成です。「ここらでウォーミングアップは終わり、本番はここからですよ。」と関係者のひと言。「ようし頑張るぞう!!」「オーバーペースもくそもあるか・・・。行けるとこまで行くんじゃ~」
 潮岬で朝めしを食べていると夜が明けてきました。“♪朝だ朝だよ朝陽が昇る~♪”そんなうたを思い出しながら足を自分でマッサージする。しかし、足が痛くなってきた。ええんやろうか・・・・・・・。
 海中公園午前七時通過。かなりペースが落ちている。カメラを向けられて元気にピースサインで走ってみせるが、ほんまは、ぼく、もうあかんのや・・・、と弱気になったり、いや、ぼくには根性があるんや。子供の頃、根性もんのテレビマンガよう見たもん。赤き血のイレブン・アニマルワン・柔道一直線・・・。
 すさみ十一時三十分七番目の順位で通過。
しかし足はもう限界にきている。頭もフラフラ・・・・・・・。最初のオーバーペースが今になってこたえてきたのか・・・。
サポートのT君が心配して「まだ行けるか?!」と声をかけてくれる。
「なんとか日置まで行ってみるわ。」と答えたものの、足がちぎれそうに痛い。一歩踏み出すごとに、ズキンと頭のてっぺんまで激痛が駆け抜ける。なんでこんなえらい(しんどい)思いを・・・・・。
 午後一時。順位は七番目。“根性”で日置のテニスコートの前まで辿り着いたものの、もう走りたくない。家はすぐそこ。帰って眠りたい。いったい田辺まで走って何になるんや。
 茫然自失の状態の中、ふと以前テレビで見た筋萎縮症の人のことを思い出した。病魔に蝕まれ、だんだん動かなくなっていく身体で、唇にペンをくわえ、一生懸命絵を描いていた。ほんとうに素晴らしい絵でした。
明日になったら自分にはもう描けなくなるかもしれないから、今、精一杯描いているのだと話していました。
「もし、神様がいて願い事をひとつだけ叶えてあげると言われたら、あなたは何を望みますか。」と質問された時彼は、「百メートルを思いっきり走ってみたい。学生の頃のように・・・。いや十メートルでもいい。ゆっくり一メートルでもいいから、自分の足でもう一度歩いてみたい・・・・・。」と
 足が痛いくらい、たいした事やない。時間が経てば治るんやし、自分が好きで参加したんやないか・・・。こうやって百キロも走ってこれるなんて、自分は何て幸せな人間なんやろう・・・。そういう気持ちになれた時、スゥーッと足の痛みも消えていったから不思議なものです。
 日置から田辺まで、決して楽ではありませんでした。しかし今まで、追い抜くとか、抜かれるとか、自分は今何番目を走っているとかいうことを考えていたのが、本当につまらない、どうでもいい事に思えてきて、とにかくゴール目指して歩き、走りました。
 見飽きた景色も、車窓から見るのとは随分感じが違うものです。こんな美しいところで暮らせる自分はしあわせ者です。
“やったゾゥ~”ゴールは本当に感激でした。足は引き攣り、身体はボロポロなのに・・・。体力の限界を超えると今まで見えなかった世界が見えてくるらしいというのはほんまなんやろうか・・・。

=苦しさを上回る感動が忘れられなくて=

あまり長いと読みたくなくなるので、ここでおしまい~
by housi216 | 2006-09-16 11:12 | マラソン